大判例

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東京高等裁判所 昭和37年(ネ)61号 判決

被控訴人は右調停により成立した賃貸借契約は一時使用のための賃貸借契約である、と主張するに対し、控訴人は借地法の適用のある賃貸借契約である、と主張するので、検討するに、調停によつて、成立した建物所有を目的とする土地の賃貸借契約については借地法第一一条の適用を排除する旨の法規は存在しないから、右のごとき賃貸借契約についても同法第一一条の適用があるものと解するのが相当であるところ、調停において五年というような短い期間を賃貸借期間として定めた場合には、それが一時使用のための賃貸借契約であることが明記されてある場合は格別、そうでない限り、右賃貸借契約が一時使用のためのものであるか、借地法の適用されるものであるかは、右調停成立に至つた事情その他諸般の事情に照して、判断すべきものであつて、調停であるからといつて直ちに一時使用のための賃貸借契約であると推定すべきではない。しかるところ、右調停によつて成立した賃貸契約が一時使用のためのものであることを推認させる事情を認めるに足る証拠は存在しないばかりでなく、原審及び当審証人塩原正一の証言、成立に争いのない甲第四号証及び原審検証の結果によれば、(1)昭和二一年に訴外塩原ゑいと控訴人間に成立した本件土地の賃貸借契約においても五年の期間が定められていたこと(2)本件土地上の建物の中には粗末なバラツク建築もあるが、別紙目録二記載の5の建物は本格的な木造建物であつて、建築当時から短期間で収去することを予定したものとは考えられないこと。(3)右調停の成立に当つても、本件土地に賃貸人である訴外塩原ゑいに代理して管理処分する権限を有していた訴外塩原正一は五年間の期間経過後も控訴人が自ら本件土地を使用する限り、引続き賃貸する意思であつたことが認められる(右認定の(3)の事実に反する当審証人塩原ゑいの証言の一部は被控訴本人尋問の結果により成立を認める甲第五号証ならびに原審及び当審証人塩原正一の証言に照し信用できない。)ところ、(1)ないし(3)の事実に前記のとおり調停条項自体に契約更新に関する事項が含まれていることを考え合せると、右調停における五年の期間は当初の賃貸借期間を踏襲したにすぎず、調停調書作成に当つても調停委員会は借地法第一一条について考慮することなく、調停条項を作成したものであつて、特に一時使用のための賃貸借契約をした趣旨ではない、と解するのが相当である。従つて右調停における五年の期間の定めは借地法第一一条によりその効力を有しないものである。しかして右調停によつて成立した賃貸借契約の期間は借地法第二条の規定により三〇年であるといわなければならない。してみると、期間満了により右賃貸借契約が終了した旨の被控訴人の主張は理由がない。

(牛山 田中 岡松)

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